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かけ紐はどうしてあれほど長いのか

 「弓を射る」というと、右手で弦をグイッと引っ張るのをイメージする人が多いと思います。けれど、実際には左腕や背筋など、身体全体を使うので右腕の負担が大きいかというとそうでもありません。逆に言うと、右腕の筋力だけで引けるというものでもないわけです。

 とはいえ、細い弦を引いている右手にはそうとうの力がかかるので、生身で弦を引いては危険です。なので、右手には「かけ」というグローブ状のものを装着します。かけには「かけ紐」という1メートルほどの紐が付いており、それを手首に巻いてかけを固定します。

 たとえば、弓を引き分けるときに力が入ってしまって手首が内側に曲がることを「タクる」というのですが、こうなると、かけが弦から離れるときに手首が素直に後ろに逃げないので危険です。こういう事態を防止するためにも、長いかけ紐を手首に巻きつけて固定するわけです。

 関節というのは横方向の力に弱い部分なので、それを補強しているわけです。不合理に感じるほど長いかけ紐にも、このように理由があります。また、高価な鹿皮を使うのも「緩みづらい」という利点があるからです。しかし、練習の際、毎回、かけ紐を締めるのは面倒なものです。

 そこで、かけ紐を手首に巻いて止めるときにかけ特有の締め方をせずに「かけピン」と呼ばれるクリップのようなものでかけ紐を固定します。もちろん、正式な場、射会や審査のときには使わないですが、練習のときは重宝するアイテムです。

 このかけピンには無地のものもあれば、絵や文字が書かれているものもあって、「一射絶命」「正射必中」「心技体」「真善美」などと書かれたものもあり、どれを選ぶかによって個性の現れるところで、こういう遊びもなかなか、面白いところです。
by kourick | 2005-02-04 00:00 | 考察