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南の風と幸福の陽だまり

 僕はちょこんと飛び跳ねた。
 陽だまりはぱしゃんと弾けると、すすすと空気に拾われる。
 いつもの光に虹がかかると、ふわっと緑の雲に晴れ間が広がる。

 地面のアスファルトは地球で、真っ白い絨毯を敷き詰めたみたい。
 木々は青々と緑を湛えて、ざわざわと茶色い両手をふるふる振るわす。
 ああ、もう、僕ってば、途端に坂を転がり落ちて、舞い上がっちゃってた。

 ふわっと宙を泳いで、紅い水蒸気の中に潜る。
 ざばっと顔を出すと、一面水色さ。
 ぱちゃんとやると飛沫があがって、色はまっ逆さまに落ちはじめる。

 僕はざぶんと潜ると宙に出る。
 透明な視界が広がって、緑の雲と紅い水蒸気で満たされる。
 いつの間にやら、それが当たり前だと思ってた。

 ごめんなさい、僕ってほんとは弱いんだ。
 嘘をついててごめんなさい。ほんとはもっと弱いんだ。
 強いだなんていわないで。ごめんなさい、それってほんとに辛いんだ。

 ごめんなさい、いつの間にやら、陽だまり弾けた。
 なんだいなんだいだらしない。
 ぽちゃんと陽だまり、また広がった。

 こんにちわ。わたしは風よ、南風。ご存知かしらと風が言う。
 知らないや、北風だったら知ってるよ。
 なら知ってるようなものじゃない、東も西も健在よ。

 それなら僕も知ってたや。知らないだなんて嘘っぱち。
 そうね、可愛い。なんだかわたし、あなたが気に入ってしまったわ。
 それなら良かった。僕も君が嫌いじゃない。

 嬉しいわ。今度はお花と遊びましょうよ。
 君はどこかに行ってしまうの?
 いえいえ、わたしはあなたと一緒。お花と話して遊びましょう。

 ああ、こういうのって嬉しいな。こういうのって幸福さ。
 良かったわ。今度はあなたの笑顔がみたいわ。
 それは楽しみ。なんだかとっても温かい。

 これって幸せなんだよね。