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親知らずの話

 昨日、唐突に親知らずを抜かれた。

 僕は来たるエックスデイに向けて情報を集めてはいた。僕の予想では、その日はまだ先のはずだったのだけれど、診察室に入ると、なぜか五枚のブラインドはすべてシャッと覆い隠された。僕は「あ」と思った。そして歯科医は僕の口内を覗いて言った。

「抜け、抜いちゃえ」

 そして、週一本抜いていこうと僕に提案した。そういうわけで面白いように簡単に抜かれ、縫われてきた。痛みもまるでない。経過も良好で、痛み止めも飲む必要はなさそうです。あの歯科医、巧すぎる。いったい何人の侍を切ってきたというのだ。

 僕は情報を集めるなかで、親知らずの抜歯というのは、「実際にはそれほど痛くないのではないか」と予感していた。それは町医者と口腔外科に関する一考察にまでいたり、むしろ、「親知らずは痛い」というステレオタイプの発生原因が気になるほどだった。

 しかしよもや、これほどまでにすんなり抜けるとは思っていなかった。それにしてもあの歯科医がアムロだとしたら、僕の親知らずはクラウンだった。僕の親知らずがもしドズルだったとしたら、それはけっこう大変なことになっていただろう。
「クラウン、ザクには大気圏を突破できる性能は無い、気の毒だが・・・しかしクラウン、無駄死にでは無いぞ!(シャア)」
「親知らず、奥歯には人生をまっとうできる性能は無い、気の毒だが・・・しかし親知らず、無駄死にではないぞ!(僕)」
「やらせわせん!やらせわせんぞぉおおお!!(ドズル)」
「抜かせわせん!抜かせわせんぞぉおおお!!(親知らず)」
 初めてのセックスで、その気持ちよさに拍子抜けする女性と、その痛さにもうしたくないと思う女性がいるらしいけれど(本当か?)、僕はそれを擬似的に体験したに違いない。しかし、親知らずは四本しかないし、そう度々抜きたいと思うようなものではない。

 近頃、歯医者に通うなかで思ったのは「痛みが足りない」ということ。いや、治療のときに痛まないのは良いことだとは思うのだけれど、虫歯の治療をしていても「これ痛いよ」と歯科医の言うところが全然痛まない。挙句の果てには「麻酔なしで全部いけそうだね」とか言われる始末。

 いいのか、僕はこれで本当に歯医者を満喫しているといえるのか。「もっと、もっとこう、グッときて! こう、神経に触るような!」という気持ちに少しなった。内心、何度か「痛みを! もっと痛みを!」と呟いたのだけれど、歯医者さんは優しかったですよ。
by kourick | 2006-02-12 00:00 | 日記