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仮面の少年たち

大学からの帰り道、僕の家の目の前にある公園で三人の仮面を付けた子どもたちがきゃいきゃいと遊んでいました。子どもたちが「きゃいきゃい」と言っているので「いやはや見事なきゃいきゃいですね」と僕が声をかけるとその三人の子どもたちはきゃいきゃいをやめ、仮面の顎の部分に指をかけるとクイッと少しだけ持ち上げ「まあね」と言いました。非常に仲が良いようです。

そこで突然リーダらしき少年が「じゃあ、いまからモモンガやるから、お兄さん、そこで見てる?」と言うので僕はあっさり「うん」と言って立ち止まりました。すると彼らのひとりは左手にグラブをはめ、もうひとりは両手でホウキを持ち、もうひとりはホウキ少年の後ろに腰をかがめました。そして仮面の右頬の部分を中指でピンッと弾いて「モモンガ」と言うと臨戦態勢に入ったのです。

リーダの少年がおもむろに腕を振りかぶると、びゅばっとなにかを投げました。それをホウキ少年が、打つ! バチッという鈍い音がすると投げられたなにかはリーダの頭の上を超え、上空10メートルあたりの位置でバッと開きました。そしてスィイーとそのまま街角に消えていったのです。それはモモンガでした。「なるほど、これがモモンガ」と僕が感嘆すると「そう、これがモモンガ」と子どもたちは言いました。

「こうやって僕たちは大人になるんだよ」とキャッチャの少年が言うので「しかし、これは動物虐待だね」と僕は言いました。するとリーダの少年が「お兄さんは大人じゃないね」と僕を叱咤しました。「いかにもその通りだ」と僕は彼らに言いました。「なんといっても僕はモモンガをやったことがない」と正直に僕は彼らに告げたのです。彼らは一様に驚いて「モモンガを?」と言いました。「知りもしなかったよ、モモンガなんて」と僕は言いました。

そもそもどこからモモンガを連れてきたのだろう。僕にはそれがいまひとつわかりませんでした。しかし、そうこうしているうちに子どもたちが怒ってしまい、もう少しで仮面を取るというところまで緊張状態に陥ってしまったので僕はどたどたと家に帰ると部屋の鍵を閉め、そこでやっと落ち着きました。すると「モモ……モモ……」という泣き声がするじゃありませんか。なんとそれはさっき打たれたモモンガだったのです。

なるほどと僕は思い、懐にモモンガを仕舞いこみました。めでたし。
by kourick | 2005-04-05 00:00 | 夢峰