アイドル舎人・チーム稗田阿礼、誦みます!

 東方project というシューティングゲームを主体とした作品群がある。僕は「地霊殿」までをけっこう遊んだ。ちなみに、ゲームとして一番好きなのは「紅魔郷」、背景やストーリを含めて好きなのは「永夜抄」、設定との絡みでよく考えられているなと思ったのは「風神録」だった。

 その作品のなかに「稗田阿求」という女性が登場する。女性である。彼女は舞台となっている幻想郷の異変や妖怪のことなどを巻物にまとめ、後世に伝える役目を担った人間(離れした人間)なのだけれど、こうした表象というのはどこからきているのだろう。『蟲師』の狩房淡幽などもこれに近い。

 少し逸れるけれど、『うしおととら』のお役目様や『乱と灰色の世界』のお館様のように、結界能力の高い人物というのも女性として描かれることが多い。どういうわけか漫画の例ばかり思いついたが、イメージとして女性のほうが見栄えするということもあるのかもしれない。神秘性もある。

 この「稗田阿求」というのはむろん、古事記の編纂者の一人といわれる「稗田阿礼」がモデルになっている。東方project では、およそ人間・妖怪・妖精・亡霊、さらには神まで、みな女性像をとって描かれるのだけれど、稗田阿求のデザインというのが、これがまあ、妙にしっくりきている。

 思えば、そもそもモデルとなった稗田阿礼に女性説があったのだ。民間人的には「なんかマイルドな名前だしオンナじゃない?」みたいな感覚で女性説を唱えていたんじゃないかと勘繰ってしまうが、柳田國男先生も女性だと言っている。泣く子も黙る、柳田國男、迫力のある名前である。

 その根拠は「稗田氏が猿女君の一族である」ということにある。猿女君というのはアメノウズメを始祖とする氏族であり、古代より朝廷の祭祀に携わってきた一族である。政祭の一致することの多かった古代社会において、重要な役割を担っていたというのは想像に易いところだ。

 また、この一族のかわっているのは、おもにその役目を女性の巫女が果たしてきたことにある。ほかの祭祀氏族は男性が携わっていたが、猿女君は女性が携わっていた。稗田氏というのはその末裔であり、ゆえに稗田阿礼も女性だったのではないかと想像されている(ちょっと飛躍しているが)。

 僕も浪漫があるので女性説を支持したいけれど、当の『古事記』に「舎人(男性が務める)」と記されているので難しいところだ。もっと想像を豊かにしたら女性にすることは可能ではあるのだけれど、考えれば考えるほど、やはり男性なんじゃないかという気がするから困ったものである。

 阿礼というのは聡明な人だったそうで、抜群の記憶力があったようだ。そこで天武天皇は、阿礼に帝紀と旧辞を誦習させた。「誦習」という言葉はもう、この場面でしか使わないのではないかと思うが、どうも「節を付け、声に出して読むこと」のようである。暗誦までを意味するのかは定かではない。

 要するに、稗田阿礼は超エリートである。もちろん文字が読めた。おそらく古語、大和言葉に精通していたのだろうが、ある程度は漢文も読めただろう。しかも、記憶した。それを後になって、漢文のスペシャリストであるところの太安萬侶が改めて文字に起こした。それが古事記である。

 スリムクラブの真栄田でなくとも、「あなたたち、高い教育受けてますね」とマジレスしたくなるだろう。僕が言いたいのは、そんな高い教育を当時の女性が受けることなどできたのかということである。うーん。いや、あるいは CLAMP のように「稗田阿礼」という特務機関があったのだとしたら!

 もしかしたらワンチャンあるかもしれませんよ、これは。(続く)
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by kourick | 2011-12-12 22:00 | 考察